人生逆転のマレーシア留学

何もなかった男が、人生逆転するまでの軌跡を綴ります。

子供の貧困・教育格差・解決策を、マレーシア留学生の僕が真剣に考える

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マレーシアの大学で正規留学をしている僕(@Just_Yuto)だが、先日、「貧困をなくする為の教育を考える」と言うテーマで、小論文を書いた。

 

 

上記ツイートの通り。

日本語に翻訳されていないような、世界中の記事や論文を参照しつつ、英語で書き上げた。

 

その報告をツイートしたら、思いのほか反響がよく、フォロワーさんから「ぜひ日本語に翻訳してブログで書いて欲しい!」とのご要望まで頂いた。それならばと言う事で、今回の記事では、僕自身が英語で書き上げた小論文「貧困をなくする為の教育」を、日本語に翻訳しつつ、より日本の現状に着目し、貧困や教育格差について考える。

 

子供の貧困、教育格差、解決策を真剣に考えてみた

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レベラリズム、人種差別問題、個人の尊厳、ジェンター平等、所得格差の是正。昨今の世の中を見ると、「不公平な世の中はダメだよね。みんなで平等な社会を作り上げて行こう!」という動きが強くみられる。要するに、社会の平等化が進んでいるのだ。

 

確かに、マクロな視点で見れば、平等な社会になりつつあるのかもしれない。

しかしながら、ミクロ視点で見れば、様々な格差に気づく。今回着目するのは、貧困問題だ。

 

まず、貧困の定義を明確にしておこう。貧困とは、社会で効果的に機能する能力の欠如である。つまり、教育の欠如は貧困の一形態と考えることができる。また、チリの経済学者ホワキン・ラヴィンは、自身の著書にて、「貧困に苦しむ人々は、自分のライフプランを組むことができない。選択肢がないのだ。すなわち、貧困とは不自由を意味する」と述べている。教育が平等でない限り、貧困が解消されることはなく、社会が平等になることはないのかもしれない。

 

もくじ
  • 学歴と年収の相関関係
  • 親の学歴・年収と子供の学力
  • 貧困対策に力を入れるイギリスの政策
  • 8歳までの経験は人格形成に影響を与える
  • 10歳以降、貧困家庭の子供は学力が低下する
  • 英語は貧困から抜け出すためのソリューションか
  • まとめ

 

学歴と年収の相関関係

よく「学歴社会は終わった!」と言われるが、学歴と年収の相関関係は、色濃く残っているのが事実である。

ではここで、一つ例を見てみよう。アメリカ出身の科学者でもあり教育ライターでもあるロン・カータスが、アメリカ人における学歴ごとの平均時給を紹介している。

 

中卒者:約11ドル

高卒者:約15ドル

大卒者:約26ドル

院卒者:約31ドル

 

引用:Income Related to Education by Ron Kurtus - Personal Finances: School for Champions

 

さすがはアメリカ。たとえ中卒者であろうと11ドル、日本円にして1100円ちょっと。ぶっちゃけ日本の地方の時給よりも全然立派な稼ぎだ…余談はさておき、ここで着目したい点は、やはり学歴によって収入が全然違うという事だ。

 

中卒者と高卒者の間には、約4ドルの差しかない。

大卒者と院卒者の間には、約5ドルの差しかない。

しかし、だ。高卒者と大卒者にかけては、11ドルもの差がある。二桁も違うのだ。

露骨なまでに、現代社会では大卒という名の資格が必要とされる。

 

 親の学歴や年収は、子供の学力に影響を与える

「なるほど。大卒じゃないとまともな給料が貰えないのか。じゃあ、大学くらいは卒業しておこう!」

 

こう思える親や子供は、控えめに見ても中流以上の家庭だろう。

しかし、こんな不平等な世の中だ、貧困だってまた存在する。なんらかの理由で経済的に困窮している家庭にとって、大学進学なんて夢のまた夢なのだ。

 

ではここで、日本の貧困家庭について触れてみよう。

このテーマに関しては、過去の記事でだいぶ詳しく書いた。例えば以下の引用文。

 

日本には、"ご飯もろくに食べられない。着る服もない。学校にすら通えない。"といった、ストリートチルドレン的な子供たちは極めて少ない。

日本の貧困家庭の子供たちは、最低限必要なものは持っているし、ゲームやスマホを持っている子供すらいる。しかし、家庭の経済事情を気にして、課外活動のクラブや塾には参加しなかったり、大学進学を断念したりする。

関連記事:日本の子供は、7人に1人が貧困状態。「相対的貧困」の定義と、解決策を考えよう 

 

いくら貧困とて、日本は言うまでもなく恵まれている国である。明日食べるものすらない、といった絶望的な貧困家庭なんて、極々わずかだろう。側からみれば、とても貧困だとは思えない家庭もある。

 

しかしながら、表面上はそうでも、塾や習い事などの課外活動にまで首が回らなかったりする。「今の時代、高校くらいは出ておかなきゃ」とは考えるけど、大学は経済的に厳しいかも、と考える。日本の貧困とは、見えにくいのだ。

 

"子供に貧困を押し付ける国・日本"の著者である山野良一氏は、上記のような見解を述べている。

 

 

こんな事を言うと、

「勉強を頑張って、良い成績を取って、給付型の奨学金を貰いながら国立大学に通えるじゃないか!環境のせいにするな!」

と説教を垂れる大人もいる事だろう。

 

しかし、お茶の水女子大学研究を見ると、親の年収は子供の学力に大きな影響を与える事がはっきりと分かっているのだから、簡単にそんなことは言えまい。

 

年収200~300万円の下流家庭、年収600~700万円の中流家庭、年収1000~1200万円の上流家庭。それぞれの収入世帯ごとの、子供の数学Bの点数を見てみよう。

 

親の年収と子供の学力(数学B) 

下流家庭:33.1

中流家庭:43.5

上流家庭:52.6

 

このようにしてざっくりと年収ごとに分けてみても、子供の数学Bの点数は、約10点ずつ差がついている事が分かる。

 

ここでもう一つ。冒頭に「学歴と年収は比例する」と主張した。おそらくだが、上流家庭の親は高学歴であるケースが多いと予想される。つまりは、高学歴の親は高収入で、かつ子供の学力も高い、と仮定できなくもないのだ。この核心に迫るために、親の学歴と子供の学力についても見てみよう。参考にするリソースは、引き続き「お茶の水女子大学研究」である。

 

父親の学歴と子供の学力(数学B)

中卒者:27.0

高卒者:37.6

大卒者:51.4

院卒者:62.7

 

母親の学歴と子供の学力(数学B)

中卒者:25.7

高卒者:36.6

大卒者:58.1

院卒者:62.4

 

父と母の学歴をそれぞれ比較すると、母親の学歴のほうがより強く子どもの学力に影響している。父親が「高卒者」である場合の正答率が37.6%、「大卒者」 になると51.4%となる。それに対して、母親が「高卒者」だと正答率が36.6%、 「大卒者」になると58.1%であり、その差は父の学歴による差よりも大きいのだ。

 

あまりステレオタイプな発想は好まないが、日本の一般的な家庭は、父親が朝から晩まで働き、母親は専業主婦か、もしくはパートなんかをしながら子育てに専念する事が多いのではないだろうか。つまり、子供とダイレクトに接する時間が長い母親の方が、より子供に影響を与えやすいと考えられる。

 

こうした事実を抑えた上で、果たして「貧乏でも、勉強を頑張って給付型奨学金を貰いながら国立大学に行けるじゃないか!甘えるな!」などと言えるだろうか。

 

給付型奨学金というのは、成績の良い生徒が受けれる奨学金である。先に見たデータによると、教養のある裕福な家庭の生徒ほど、学力も高いのだから、奨学金を受けれるチャンスも少ないはずだ。

 

僕が思うに、貧困家庭の子供に対する救済処置はまだまだ少ない。だからこそ、貧困は連鎖しているのだ。いわば恵まれない子供に対して、「甘えるな!」はあまりにも無知で無慈悲な発言じゃないか。どうしたら貧困を無くせるのか、僕ら大人が冷静になって考える必要があるんだ。

  

僕のような素人でも思いつく貧困対策。それは、経済支援だ。しかし、我ら日本を含む多くの先進国では、既に貧困家庭に向けた経済支援を導入している。

 

貧困対策に力をいれるイギリスの政策例

特に、貧困対策で大きな成果を上げているのが、イギリスだ。

イギリスでは、貧困対策法を数値化し、毎年議会で進捗状況を報告し、3年ごとに戦略を策定することが義務付けられている。具体的には、イギリスでは主に2つの取り組みがある。

 

一つ目は、イギリスの公立学校が低所得家庭の生徒の学力向上を支援するために、政府が公立学校に支援金を与える「Pupil Premium」。

 

そして二つ目は、子どもが18歳になったときにある程度の貯蓄ができるように国民に貯蓄を促すために設けられた、「Child Trust Fund」である。

国がこういった試みを始めて以来、イギリスの子どもの貧困率はこの20年間でみるみるうちに低下している。

 

フランシス=デバインによる英国の貧困統計では、絶対的な低所得にある子どもの割合は、この20年間で41%から17%に低下しているのだから、いかにイギリス政府が子供の貧困問題に対して真剣に向き合い、取り組んでいるかが伺える。

 

8際までの経験は子供の人格を形成する

そもそもなぜ、子供の貧困問題が問題なのか?

貧困に苦しんでいるのは、何も子供だけじゃない。貧困状態の大人だってしんどいじゃないか。

 

確かにそうだが、貧困というのは、根本から根絶やさない限り続くといっても過言ではないだろう。そして、貧困という負の連鎖を断ち切るのには、やはり明日の社会を担う子供に掛かっている。

 

特に、8歳くらいまでの子供には、重点的にサポートをする必要がある。

 

全米科学・工学・医学アカデミーによると、8歳くらいまでの幼い子どもは、周囲の環境や自身の経験、それから、周囲の大人との信頼関係に強く依存しながら成長すると述べられている。また、それが子どもの人格形成の基礎となり、子どもの将来に永続的な影響を与えることも分かっている。

 

つまりだ。幼少時に良い大人に囲まれ、習い事などを通して質の高い経験をした子供は、 至極健康的に、すくすくと成長する。

一方で、そのような大切な時期に、一人の時間が多かったらどうだろう。もっと劣悪な環境、例えば、親に虐待を受けたり、借金取りに土下座をする親を目の当たりにしたり、ろくな経験をさせてもらえなかった子供はどうだろう。幼児期の経験や記憶が基礎となり、人格形成につながり、半永久的に影響を与え続ける。

 

自信喪失、トラウマ、PTSD、鬱といった心の問題に繋がることはいうまでもない。

 

10歳を境に貧困家庭の子供は学力が低下する

そして更に、日本の貧困家庭の子供は、10歳くらいを境に学力が低下すると日本財団の研究で明らかになった。

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引用:家庭の経済格差と子どもの認知・非認知能力格差の関係分析

 

これは、貧困家庭と平均的な家庭の偏差値を比較したグラフだ。9歳までは双方に大した差異はない。しかし、10歳の貧困家庭の子どもの偏差値は45.1であるのに対し、平均的な家庭の子どもの偏差値は50.6と差が生まれ始め、それ以上の年齢になると、差は大きくなっている事がわかる。

 

先に見た通り、学力が低い子供は、親の低学歴および低収入が傾向が強い。貧困家庭の親は、学歴が理由で、高単価の仕事を得る事が難しいため、寝る間も惜しまず働く。その分、子供は親と過ごす時間が少なく、孤独の中で成長する。

 

  • 「今日の学校はどうだった?」
  • 「宿題を確認してあげるよ」
  • 「休日は何処かへ出かけよう」

 

こうした家庭内での会話が極端に少ない事で、子供のメンタルは不安定になり、宿題を確認したり勉強を教えてもらう機会も少ない。これが学力低下の主な理由だろう。

だからこそ、8歳前後までの貧困にある子供には、国や地域がサポートする必要があるのだ。

  

英語力は貧困から抜け出すためのカギか

親の年収や学歴が子供に影響を与える事もわかった。8〜10歳くらいまでの経験は人格形成において重要らしい。イギリスでは国を挙げた貧困対策がされているらしいじゃないか。わかったわかった。じゃあ具体的に、貧困家庭の子供たちは、どのような教育を受ける事で貧困から抜け出せるのだろうか?考えてみよう。

 

これに関しては、ひとえに「これを教えたら将来は貧困から抜け出せる!」と断定するのは難しいが、年収の高い人に共通している事はいくつかある。

 

例えば英語力

アメリカの経営学誌"ハーバード・ビジネス・レビュー"の記事にて、クリストファー・マコーミック氏は、英語力は所得に比例する、と主張する。

世界最大級の語学教育機関であるEF英語力指数と、世界各国の一人当たりの所得を比較したところ、調査対象となった60カ国のほぼ全ての国で、英語力と所得の伸びに強い相関関係があることがわかった。また、個人レベルで見ると、採用担当者や人事担当者、高い英語力を持つ求職者は、平均よりも30~50%高い給与を得ている結果も出ている。

 

また英語力は、収入のみならず、生活の質にも関係するという。

というのも、英語力と人間開発指数(教育レベル、平均寿命、識字率、生活水準を測る指標。以下HDIと呼ぶ)には相関関係があることもわかったからだ。下のグラフを見ればわかるように、英語力の低い国と非常に低い国では、発展具合のレベルにばらつきがあるものの、しかし、中等度以上の英語力の国では、HDIの「非常に高い人間開発指数」を下回る国はない。

 

このグラフでは、幸福度の高い国として知られるノルウェーが最も高い指数に位置しているのも興味深い。

 

Better English, Better Quality of Life Chart

 

引用:Countries with Better English Have Better Economies

 

 

年収700万以上の日本人は、半数以上が英語の読み書きが可能

幸福度まで追い求めなくとも、日本という国では、英語が話せるというだけで大きなアドバンテージなのは事実である。

 

これは、過去の記事【大学生、社会人向け】人生を変えるオススメの自己投資3選 でも触れた。

 

全国の1000人に語学力と本人の年収を調査したところ、年収700万円以上の人は約半数(48.7%)が英語での日常会話や読み書きが出来ると回答しました。年収500万円から700万円未満の人では34.0%、年収500万円未満では22.4%となり、英語力と年収の明らかな相関が見られる結果となっています。

出典:株式会社キャリアインデックス

 

年収700万円以上の人は約半分くらいの割合で、英語の日常会話や読み書きが可能とのことだ。

 

日本人にとっては、英語が堪能というだけでかなり自身の市場価値が上がると言っても良いだろうし、就職時にはそこそこ誇れる武器になるはずだ。

 

チリの経済学者、ホワキン・ラヴィンは、自身の著書にて

「長期的な仕事に就いた人は、しばらくすると貧困から抜け出すことができる為、雇用こそが貧困を断つための最良の解決策である。」

引用:A Fast Track Way To Reduce Poverty: Practical Handbook for Decision Makers

と論じている。

そんな簡単な話ではないのは分かっている。しかし、英語を身に付ける事で、安定した職につける可能性は増えるだろうし、貧困から抜け出せるのかもしれない。

 

 

まとめ

思い出, 小学校, 教室

貧困を解決するための策を考える事は容易ではない。

ぶっちゃけまだまだ書き足りないが、キリがないのでここら辺にしておこう。

 

現代社会に蔓延る貧困だが、僕たちが最初にするべき事は、貧困の理解を深める事だろう。貧困のリアルから、社会に与える影響まで、物事を知るという行動が大切だ。募金やボランティア、自分自身が彼らにできる事を考えると言った営みは、それからでも遅くはない。

 

当ブログや僕のTwitterでも、貧困や教育についての情報を定期的に発信しているので、ぜひ理解を深めるきっかけにしていただければ幸いです。

 

関連記事:日本の子供は、7人に1人が貧困状態。「相対的貧困」の定義と、解決策を考えよう


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